抗生物質 医師、患者双方の意識変革を

仕事がら、どこのお医者さんが良いなどの評判を耳にすることがあります。

どこそこのお医者さんは、

胃カメラが上手だが、そのあとの見立てがダメだとか(笑)

それが本当かどうかは分りませんが、

病院のお世話になることが多い高齢者は、

いろいろな情報を持っています。

物腰の柔らかいお医者さんは、

人気があって、

いつ行っても混んでいるようですね。

* * * * *

世界初の抗生物質であるペニシリンが

アレクサンダー・フレミング博士によって発見されたのは、

90年前の1928年。

医療用として実用化されるまでにはなお10年以上を要したが、

この功績で同博士はノーベル生理学・医学賞を受賞。

以降、多くの抗生物質(抗菌薬)が医療現場に提供される礎を築いた。

だが、

細菌の増殖を抑える抗菌薬は、

例えばウイルスが原因の風邪には効果がない。

そればかりか誤って多用すると、

薬が効かなくなる薬剤耐性菌の増加につながってしまう。

鹿児島と静岡の病院で8月、

耐性菌に感染した患者計10人の死亡が明らかになったことは記憶に新しい。

にもかかわらず、である。

44%の人が抗菌薬は風邪やインフルエンザに効くと誤解し、

3人に1人が風邪に抗菌薬を処方するのを「良い医師」と

思っていることが国立国際医療研究センターの調べでわかった。

こうした患者側の求めに応じて、

6割の医師が抗菌薬を処方していたとの別の調査結果も出ている。

厚生労働省によると、

抗菌薬の乱用対策が取られずに耐性菌がこのまま増えて行けば、

2050年には世界で年1000万人の死亡が想定されているという。

抗生物質(抗菌薬)は、万能薬ではありません。

同省は抗菌薬の使用抑制策などに乗り出しているが、

それに加え、

医師、患者双方の意識変革も迫られている。

小児感染医療の専門家でピュー・チャリタブル・トラストの調査を率いたデヴィッド・ヒョンは、「今回の調査で明らかになったのは、抗生物質が不適切に処方されている場合でも、必ずしも医師の知識不足や誤診が原因とは限らないという点です」と説明する。「社会的、経済的な理由や、診察の間に起こっている行動要因もあります」

「患者の満足度」という大きな問題

しかし、最も根強い原因はほかにある。患者が抗生物質を欲しがるのだ。そして、医者はそれを断ることができない。

おかしいと思われるかもしれない。薬を処方するときに主導権を握っているのは医者だ。しかし、医療の世界では医者に指示を出しているのはむしろ患者だという認識が広まりつつある。医者は医療というサーヴィスの提供者であり、サーヴィスを受ける側の患者がマイナスの評価を下すとほのめかしたり、はっきりとそう脅すことで、力関係が逆転してしまっているというのだ。

ヒョンはこう話す。「医者は顧客満足度という観点からは患者の言うことを聞いたほうがいいと考えます。この患者に再びサーヴィスを利用してもらうには、欲しがる薬を処方すべきだと判断するのです。正しいか間違っているかは別として、医療従事者の頭の中では実際にこういった思考回路が働いています」

ヒョンは実際、医師たちが「抗生物質を処方しなければ、患者は別の病院に行くだけです。それにどちらにしろ、そこでは抗生物質を出してもらえるでしょうから」と言うのをよく耳にするという。ドクターショッピングと呼ばれる現象は昔からある。しかし、医者が内外からさまざまな評価を受け、それが医療に影響を与えるようになったのは最近だ。

評価が自分の給与や病院の業績に直結する以上、患者の満足度を上げるために余分な薬を出したり、本来なら必要ない検査をしたりといったこともせざるを得ないと、現場の医師たちは訴える。2014年に発表されたある調査は、「患者の満足度は客観的な治療の効果より、自分の希望がどれだけ満たされたと感じるかといったことに影響を受けやすい」と指摘する。調査対象となった医師155人のうち、満足度調査に肯定的だったのは3人にとどまったという。

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